NARUTO if ~ 熱血 落ちこぼれの章 ~第3話
第3話「少年」
あの事件の日、多くの家で火の手が上がり、
それは この理髪店を営むロック家も例外では無かった。
里中が一大パニックになった。
禍の中心では、就任 間もない四代目火影を筆頭に、
里の忍達は大いなる禍に立ち向かっている。
また、居住区でも、里の忍達が、民間人を避難所へと誘導し、
パニックを収拾するのに努めていた。
突然の出来事と禍の主を目撃してしまった恐怖で、
立ち尽くす母を 逸早く 誘導役の忍の一人が見付けて、
避難所へ向かう行列に合流させてくれた。
そこで、父と再会を果たし、父と母もその誘導に従い
避難所を目指していた。
しばらくして、正気に戻った母は ある重大な不幸に気付く。
まだ1歳だった我が子が、燃え盛る家の中に居るのだ。
隣の部屋にはリーを寝かし着けていたのだから。
そして、リーが助けられた様子もない。
父も、母を助けてくれた忍も、今、自分達を避難所へ誘導する忍も、
誰もリーを知らない。
母は、一瞬、真っ青になったが、今度は、真っ赤になって、
父と共に我が子を助けるべく引き帰そうとしたが、誘導役の忍達に
引き留められてしまった。
「放せ!離してくれ!」
「放して!リーが!子供が、まだ!!リーッ!!」
母は、涙ながらに訴えた。
その時だ!
何処からともなく威勢のいい咆哮がこだまする。
「ダァイナミィック、エントゥリーッ!!」
同時に、碧い影が飛び蹴りのポーズで、物凄いスピードで、
リーの取り残された 燃え盛る 我が家の壁をぶち抜き突っ込んでいったのが
父と母の瞳に映る。
次の瞬間、先程 空いた壁の穴を クルクル丸まり回転しながら、
炎を潜り抜け、碧い影が 飛び出した。
そして、影は 父と母の眼前に降り立った。
影の正体は、全身 緑のタイツにベストをしたオカッパ頭の顔の濃ゆい、
それでいて、何だか爽やかな感じを醸し出す不思議な少年だった。
その腕には、赤子が抱きかかえられていた。そう我が子リーが。
一瞬の出来事に その場の全員が 動きを声を失った。
母の頬を涙が伝う。そして、母の泣き声が沈黙を破った。
「ああ、リー!!ありがとうございます!ありがとうございます!」
少年は泣きじゃくるも手を伸ばす母に、赤子をそっと渡す。
母は、ギュッと、それでいて とても優しく 我が子を抱きしめる。
父も、ようやく口を開く。
「ああ、よくぞ!何とお礼をしたら良いのか!ありがとう!
本当にありがとう!」
「なぁに、当然の事をしたまで!」手の平を突き出し、父と母を静止する。
「礼には及びませんよ!」キラリと歯が輝く。
「がっはっはっはっ!」両手を腰に胸を張る。
「では!」呆気に取られるギャラリーを余所に、少年は、
またキラリと歯を輝かせ ナイスガイなポーズで そういうと、
名も名乗らずに その場を立ち去った。
父と母は、少年の名も聞けぬまま、群衆と共に避難所へ押し流されて行った。
「ああ、アレか・・・、結局、あの少年は分からず終いだったなァ。」
あの時の事を思い浮かべながら、父は、懐かしそうに、そして、
何処か嬉しそうに 遠くを眺めて、そう言った。
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